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B737MAXの安定性の問題
2019/09/01 11:20:23 ブログカテゴリ オタク | 書庫 MAX問題

インドネシアに続きエチオピアでの墜落事故以降、飛行停止となっているB737MAXの問題は今後の航空機開発に与える影響も大きく、関心をもっているけれど、多くの訴訟を抱えていることもあってかあまり詳しい内容が報道されない。
そんな中で重要なポイントについて的確に指摘し説明してくれるのがこのおじさんだ。




blancolirio channelのJuan Browne さん


ご本人が種々の飛行機を乗りこなしてきた経験豊かなパイロットということもあって、この方の解説は冷静でとても説得力があり、説明に使う資料も豊富で見ごたえがある。
製造したボーイングからは原因に類することは発表されず今年中に空に戻すような現実無視の夢語りしか聞かれないので本当の技術的な問題について解説してくれる彼の見解は今、とても貴重だ。





直接の事故原因となったMCASについては、この石垣空港メモリアルでも都度、報道された情報をもとにその功罪について検討し意見を述べてきた。
事故詳細については事故調の結果を待つしかないものの、一連の事故原因には型式証明取得の過程に欠陥があることは間違いない。
また、その一連の開発経緯にはエアバスとの販売競走での焦りや、経済重視の考え方から危険な設計をしたボーイングにも、まともな審査もしてないFAAの態勢にも問題があることを確認してきた。
ただ、こうした傾向はこのMAXだけの話しなのだろうか?他の機体の安全性にも波及する問題はないのだろうか?
今回はひとまず、現在の航空機開発で重要となる設計思想について考えてみたい。
このビデオではMCASを導入せざるを得なかったそもそもの機体の空力特性についてBrowneさんが興味深いグラフを示して解説をしてくれているので紹介したい。




MCASが必要になった理由は、このグラフにある

これは横軸にAngle of attack(迎え角)を縦軸に重心周りのCm(モーメント係数)をプロットしたグラフで機体の縦の静安定を示している。
縦のモーメント係数はマイナスが頭下げを意味するため、迎え角を増やした場合にピッチングモーメントはマイナスになっていれば縦の静安定はプラス。すなわち右肩下がりであれば縦の静安定を有していることがわかる。これでいうと(赤い線がMCASなし)確かに迎え角12度までは正常だ。
しかしながら迎え角を12度よりも大きくしたら怪しくなってくる。14度を過ぎたあたりでは逆転現象もみられる。
これが迎え角の増大により、失速角付近でLEAPエンジン搭載によって大きく前に突き出たナセルに揚力が生じ縦の静安定を阻害している原因と思われ、従来の機体との整合性を図るためにMCASを搭載せねばならなかった根源的事象ということが出来るかと考えている。
かようにしてその意図はわかったし、MCASを介在させて緑のラインのようにしたかったのは分かるが、問題はその方法にある。本来意図したように設計がされたとは到底、思われないのだ。



AOAセンサーの情報をもとにMCASはきわめて乱暴な制御をする。パイロットから勝手にエレベータの権限を奪い取り、10秒間機械的にダウンの操作をし、5秒待って達成しないと、これを操縦者の意志に反してただただ繰り返す。システム上、壊れたAOAセンサーを正常な側に切り替えることもできない。これが本当にボーイング機か・・・






そして操縦力線図ではこんなことになっているらしい。
MCAS作動により操縦力とピッチも耐空性が求めるリニアな関係になっていないのだ。
しかも、今回の2つの事故で共通していることは、実際に窮地に陥った際の迎え角は両機とも失速角ではなくAOAセンサーの誤作動により、ずっと小さな迎え角時にこの状態に入り、頭を下げ、まっさかさまにダイブしていったのだ。




この状況はRUNAWAY STABと呼ばれ従来から認識はあったようだ。パイロットはそんな場合には、この赤丸内にあるスイッチを切れと教わっていた。
インドネシア機ではそれをしなかったため、パイロットへの教育不足とされた。アメリカの質の高いパイロットならカタストロフは避けられたはず、だと。
しかしエチオピア機の場合では、パイロットは指示にしたがってスタブトリムスイッチを切ったのだ。
にも関わらず、姿勢を回復することができなかった。もはや離陸出力で失速角でもない機体の飛行速度は人力でトリムできる操縦力範囲にはなかったのだ。
これを回避するには、一旦、コラムを戻してたるみを作った後にトリムホイールを操作するローラコースターという手法しかないが、高度がないエチオピア機ではその余裕はなくVmoを超える速度でやれば機体を破壊しただろう。
ハドソン川の奇跡で有名になったサリー・サレンバーガーも、けしてあってはならない事故であり、現状の設計であればアメリカを含め世界中のどこでも起こる事故だと公聴会で語っている。
一方で同じ事故がエアバスでも起こるかといえば起こりそうにない。
Browneさんの指摘どおり、ここにはエアバスとボーイングの設計思想の違いがあることも事実だ。
最終決定権は人間側にあるとするパイロット中心のボーイングの思想に対してエンベロープを越えるようならパイロットの指示を切り捨ててでもコンピュータに機体を守らせるという思想だ。
しかし一方で機械は壊れることもある、またプログラミングされていない不測の事態には対応できない。膨大なプログラムをミスなくチェックするのも大変な作業だ。実際に初期のエアバスではパイロットとコンピュータが喧嘩になり落ちたことも度々だった。
しかしMAXと異なりエアバス320のAOAデータのソースは複数あり、人からコンピュータへとの潮流の中から学んでいるのも事実だろう。

果たしてどちらが良いのかは今後も議論が長く続くはずだが、航空需要の伸びでパイロット不足は深刻という状況では機械への依存が高まるのは必至だろう。
またMCASが耐審基準にも合致していた当初の思想が反映されず、これほどズサンなシステムとして世に送り出てしまった背景には開発にあたった専門職の他の部署への配転や後任に経験のない人間をあてててしまったなど人的要因もあったようだ。
操縦でも設計でも人に頼るのでれば、頼れる人を企業は大事にしなければいけないという教訓でもあろう。

そしてこのBrowneさんは、巡航時の経済性を高めるため尾翼の下向き揚力を減らし安定性を犠牲にしてまでCGを後方に下げ、CCVの戦闘機並みに不安定にさせている要因も指摘している。
すべて金。コストのかかるシニア技術者を切ってしまったボーイングCEOの無能ぶりは目にあまる。
人命、経済性、設計過程についても今一度、総合的に判断して見直しする必要があるのではないかと思う。
明らかな機体設計の不備で連続事故を起こした航空機MAXはコメット以来の逆エポックではなかろうか。346人の命が奪われたことへの責任問題とは別に人の命を託せる安全な航空機はどうあるべきかを我々は学びなおすべきだ。


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